直訳では「オリンピックの火」 日本ではなぜ「聖火」?
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コロナ禍で1年延期された東京五輪の聖火リレーが始まり、間もなく1カ月。途中で消えるなどのトラブルもあった聖火だが、そもそも、なぜ「聖なる火」と呼ぶのだろうか。
大会組織委員会は「平和、平等、友愛といった人類共通の理想を、見る者の心に呼び起こすのが聖火」と説明。「きたる大会の期待を高めるとともに、こうした理想のビジョンを伝え、五輪の精神や価値を神聖なる形で表現するのが聖火リレー」としている。 ただ、五輪憲章の「オリンピック聖火」の項目を見ると、憲章の公用語である英語版では「the Olympic
flame」とある。仏語版も同様で、いずれも直訳すると「オリンピックの火」で、「聖」に当たる言葉はない。 ではなぜ「聖火」なのか。
五輪の歴史に詳しい東京都立大・武蔵野大客員教授の舛本直文さんによると、近代五輪に「聖火」が初めて登場した時期には諸説あるが、いずれも競技場の塔にともす灯台の火のようなものだった。1932年ロサンゼルス大会で、当時の朝日新聞は「オリムピツク塔のかがり火」と書いている。
五輪で「聖火」の言葉が朝日新聞に登場したのは、36年2月20日の朝刊、夏のベルリン大会の前に同じドイツ・ガルミッシュパルテンキルヘンで開かれた冬季大会の記事が初めてとみられる。写真説明に「オリムピツクトーチの聖火」と記された。